NAGOYA

CITY

hair & music FAM

レコードの奥深さに触れる、
“束の間のひととき”を提案。

都会の喧騒から離れ、
ゆっくり向き合える時間を。

名古屋・池下の住宅街を歩いていくと、「hair & music parlour FAM」が立ち現れる。この店は、その名の通り、美容サロンとレコードショップが共存するユニークな構造となっている。


店を手がけるのは、DJでレコードバイヤーのtonさんと美容師である奥さん、そして、元々レコード店勤務をしていた旧友であり元同僚の若林さんの3人。かねてから「自分たちの店を持ちたい」と願っていた夫婦の想いに、レコード屋を共にやりたいという気持ちが重なり、3人で構想を練り始めたのが出発点だった。


駅から少し歩くやや立地的には不便な場所だが、「理想的な場所を見つけた」とtonさん。「都会の喧騒から少し離れて、アナログレコードにゆっくりと触れてほしい。美容室で過ごす時間も、ただ整えるだけでなく、心を緩める時間にしてほしい」そんな3人の考え方とこの場所はリンクした。


「FAM」という店名は、“For a moment=束の間のひととき”という意味の単語の頭文字を合わせた造語。頭に「hair & music parlour」とつけたのは、アフリカ・ザンビアの「Zamrock(ザムロック)」と呼ばれるマニアックな音楽のレコードレーベル「Zambia Music Parlour」へのオマージュでもあるという。「このレーベルも、オープン当初はヘアサロンと併設されていたそうで、私たちの形にもどこか通じるものを感じました」。

「アフリカの音楽と聞くと、誰もが土着的でパーカッシヴな民族音楽を想像すると思いますが、Zamrockは良い意味でそれらとは全く異なる、言わば突然変異のようなサウンドなんです」とtonさん。

レコード文化の魅力を伝え、未来へとつなぐ。

「レコードを始めてみたいです!と言ってくれる若者との出会いは本当に嬉しい。そういう人たちがいる限り、この文化が絶えることはないと信じています」と語るtonさん自身、「Zamrock」をはじめ、レコードを介した未知の音楽との出会いに深く魅了されてきた。


自分の理想ともいえるショップをオープンさせたtonさんの次なる展望は、全国各地での出店やDJ活動。それらを通じて、レコードの奥深さや音楽との出会いの楽しさをさらに広げていくことを目指している。

  • 一点一点レコードに添えられたPOPのテキストは、ユーモアと情報量たっぷり。読んでいるだけでワクワクしてくる。もちろん、店内で試聴も可。

  • 「この大量の付箋は、お客さんが探しているレコードのオーダー票なんです(笑)」とスタッフの小川さん(写真左)。彼は、ceroなどを排出した「カクバリズム」からリリースしている「Ogawa & Tokoro」のギタリストでもある。店内でギター教室も時折開催しているそうだ。

  • レコード棚の下に、tonさんが趣味で集めているという、レトロな家庭用レコードプレイヤーもあり(非売品)。

  • 海外のレコードショップやレーベルのロゴ入りトートバッグも多数あり(非売品)。

  • レジ台の後方の壁面に飾られたレコードは、右半分がtonさんのセレクト。左半分がもう一人の立ち上げスタッフの一人、若林さんのもの。

  • 「買取の中で、自分も知らなかったレコードの出会いがあります」とtonさん。今のラインナップでオススメは?と聞くと、「フランスのレーベルからリリースされた、カメルーンの電子音楽家の鬼才・Francis Bebeyですね」。

  • tonさんの相方・若林さんのセレクトの棚で見つけた、ジャケ買いしそうになったレコード。若林さんはニューウェイブ、パンク、バレアリックなどが好きなジャンルなのだそう。ちなみにこちらは、バンド名:猛毒、タイトル:石松。イロモノ、ゲテモノバンドをリリースする「殺人塩化ビニール」からのリリース作。

  • 「Van Morrisonは全部いい」というのがFAMの社訓だそう。tonさんのフェイヴァリット・ソングは「Tupelo Honey」。こちらのレコードのPOPには、「2階美容師推薦」のスタンプを発見(笑)。

Photo:SHIORI IKENO
Interview, Text & Edit:TAKATOSHI TAKEBE (LIVERARY)

GUEST & GUIDE

Licaxxx

Licaxxx

店主のおすすめも気になるものばかり。毎日通って、時間の許す限りちょっとずつ掘りたいレコード店


東京を拠点に活動するDJ、ビートメイカー、編集者、ラジオパーソナリティ。2010年にDJをスタート。マシーンテクノ・ハウスを基調にしながら、ユースカルチャーの影響を感じさせるテンションを操り、大胆にフロアをまとめ上げる。2016年にBoiler Room Tokyoに出演した際の動画は60万回以上再生されており、Fuji Rockなど多数の日本国内の大型音楽フェスや、CIRCOLOCO@DC10 などヨーロッパを代表するクラブイベントに出演。日本国内ではPeggy Gou、Randomer、Mall Grab、DJ HAUS、Anthony Naples、Max Greaf、Lapaluxらの来日をサポートし、共演している。さらに、NTS RadioやRince Franceなどのローカルなラジオにミックスを提供するなど幅広い活動を行っている。さらにジャイルス・ピーターソンにインスパイアされたビデオストリームラジオ「Tokyo Community Radio」の主宰。若い才能に焦点を当て、日本のローカルDJのレギュラー放送に加え、東京を訪れた世界中のローカルDJとの交流の場を目指している。また、アンビエントを基本としたファッションショーの音楽などを多数制作しており、近年ではWリーグの音楽プロデュース、yoshiokubo、Chika Kisadaのコレクションに使用されている。

奥冨直人/TOMMY

奥冨直人/TOMMY

BOY

興味を後押しするレコメンドに、時間を忘れてしまうムード。お気に入りの1枚に出会えました。


渋谷区宇田川町にあるファッション/音楽をベースとしたコンセプトショップ・BOY ショップオーナー。2007年よりDJとして活動を開始し、これまでにFUJI ROCK FESTIVAL / SUMMER SONIC / RISING SUN ROCK FESTIVAL / 森、道、市場 / BAYCAMP / りんご音楽祭等の音楽フェスや、各地のライヴ・クラブハウス、アパレルブランドのイベント等多数出演。日々軽快なフットワークで全国を巡回中。ヘッドフォンを使用しないダイレクトでアクティヴなスタイルが特徴。オルタナティブ/時事/ストーリーを大切にした独自の選曲とフィジカルパフォーマンスを織りなす。

ヨシムラユリコ/yoshimRIOT

ヨシムラユリコ/yoshimRIOT

YURIKO YOSHIMURA/yoshimRIOT

FAMに行くと、自分の大好きな80年代ニューウェイブのレコードが大量にあるのでついつい買ってしまいます。


2013年にパーティークルーRIOT girlを名古屋にて立ち上げる。80’sのアンダーグラウンドなニューウェイブから骨太なシカゴハウスを中心にミックスする。ロンドン拠点のNTS、南アフリカ拠点のUBRFM、東京拠点のTSUBAKI FM等のショーへDJ MIXを提供し、国内外でDJ活動を行う。2025年 10月自身の店「さけとおんがく エチュード」を開店。

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