NAGOYA

CITY

WANG WANG STORE

観光地・大須に提示する、新しいカフェの在り方。

名古屋の中心地からから発信する意義。

名古屋出身の豊田隼仁(はに)さんは、国際的な感覚を持つ家庭に育ち、12歳で単身マレーシアへ留学。小学校卒業と同時に海外に行くことが自然な選択肢として受け入れられるような家庭環境で、本人もそれに迷いはなかったという。その後イギリス・ロンドンの大学「CASS BUSINESS SCHOOL」系列校で経済学とマーケティングを学び、在学中は古着の買い付けやDJイベントなどを通してカルチャーを実践的に吸収してきた。


そんな原体験をもとに「自分なりの新たなカルチャー発信の場を、名古屋のまちなかに作りたい」という思いから、2025年春、地元・名古屋の大須に店舗をオープン。大須は、名古屋の中心・栄から程近い人気エリア。海外からの旅行者はもちろん、市内外からも幅広い層が集まる観光地の要素も強い賑やかな街だ。あえてそうした“開かれた場所”を選んだのは、特定のカルチャー層だけでなく、もっと広い範囲の人たちに発信したいという思いからだった。


おすすめのメニューは、クロワッサン専門店「奏」から仕入れている「アーモンドクロワッサン」。豊田さんがイギリスで毎日のように食べていたお気に入りの味に近いのだそう。そこに名古屋の“モーニング”文化を掛け合わせた「クロワッサンモーニングセット」も展開。海外と地元の文化がさりげなく同居したその組み合わせは、店のムードを象徴するような一品だ。

  • 豊田さんが大学時代に出会った中国、インドネシア、モルディブ出身の仲間たちと運営チームを組み準備を進めた。グラフィックデザイン、ブランディング、マーケティング、それぞれの専門分野を活かしつつ、グローバルなセンスを持ち寄り形にしていった。

  • エントランスから裏口まで見通せる抜け感が気持ちのいい店内。

  • ドリンクメニューは、珈琲のオリジナルブレンドを担当した焙煎師とともにレシピから考えた。カフェラテ、抹茶ラテが人気。

  • 海外から届いたアートポスターも一部を壁に貼って販売。こちらは台湾のアーティスト。

  • 花瓶を包むように毛糸で編まれたカラフルな手芸作品は、ベルリンのアーティストのもの。

  • 試しに設置してみたというメッセージボード。お客さんからの反応も良く、次々と集まった。

ローカルと海外をつなぐ、
日常から広がるカルチャーの入り口に。

「ちょっと入りづらいかも」。そんな声が、オープン当初はあったという。通りに面した立地であっても、クールな店の佇まいがハードルとなった。「かっこつけてるだけではダメだ」と、手書きのポップやテイクアウトの張り紙をするなどして、細やかな対応をし、地域との壁をゆるやかに溶かしていった。


その効果もあってか、現在では常に人が訪れる人気スポットになりつつある。「当初から単なるカフェにはしたくなかった」と豊田さん。「今後は、店内で古着の販売や、海外のZINEやアート作品の展示販売にもさらに力を入れていきたい」のだそう。カフェという日常的な機能を持たせつつ、新しい発見につながる“入り口”のような存在として、さらに街に開いていく。

建築デザインは、名古屋拠点の「Analogue」に依頼。打ちっぱなしのコンクリート壁に木製のパネルを張り、温かみを演出。さらに、キーカラーのテープを棚板の側面に貼って差し色を加えた。壁面棚を使った展示やPOP UPについては、お店のInstagramをチェック。

Photo:RIKA KAWAI
Interview, Text & Edit:TAKATOSHI TAKEBE (LIVERARY)

GUIDE

武部敬俊

武部敬俊

「LIVERARY」/「YOURCITYISGOOD?」編集部

なんかおもしろそう!な匂いがする名古屋シーンのニューカマー。これからどんな場所に育っていくのか?期待大。


編集者。1983年生まれ。これまでさまざまな編集プロダクション、出版社に勤務し編集ノウハウを学ぶ。2013年よりWebマガジン「LIVERARY」を仲間たちとともに始動し、名古屋を拠点にカルチャートピックを日々発信・提案し続けている。メディアの編集・運営のほか、イベントの企画制作、ショップのプロデュース、広告物や物販のグラフィックデザイン、アートワークまでを手掛け、広義における編集者として活動中。2025年、新しい視点を持ったカルチャーシティガイド「YOUR CITY IS GOOD ?」に、企画・編集として参加。

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