FUKUOKA

CITY

すすむ堂 Susumu do

料理もお酒も心地いい、
隠れ家的炉端酒場。

扉の向こうに広がる、炭火の香り。

渡辺通りの裏路地を進み、昭和の空気を残す建物の2階へ。扉に書かれた「202号室」の文字は、まるで住宅の一室のようで、思わずノックしたくなる。けれどその扉を開けると、想像とはまったく違う空間が広がっていた。丁寧にしつらえられた炉端焼きの店。炭の香りに迎えられ、外とは少し違う時間が始まる。


店主の野口貴史さんは独立を前提に、九州炉端焼きの代表店のひとつである「雷橋」の系列店、殻の三光橋で店長として修行を積んだのち、2025年6月に「すすむ堂」をオープンした。


目指したのは、京都のおばんざい屋と酒場の空気が混ざり合ったような、今までにない居心地のいい店。炉端焼きらしいライブ感ある酒場の雰囲気を持ちながら、丁寧にしっかりと料理を楽しめる、高級感ある小料理店のような空間になっている。


食材のラインナップは、その日の仕入れによって変わる。できるだけ少ない工程で、素材のおいしさをそのまま感じてほしいというのが野口さんの考えだ。信頼する人や付き合いのある店から届く食材や、野口さんの妻の実家である鹿児島の小野食品から仕入れる干物など、扱うものにも人とのつながりがある。


知覧どりや、小野食品の鯖をみりん漬けにた鯖みりんの炭焼きは、すすむ堂でぜひ味わいたい一皿。豊富なメニューを前に迷っていると、野口さんがカウンター越しに、お腹の空き具合を聞きながら、料理とそれに合うお酒を提案してくれる。

  • 知覧どりに、福岡の日本酒「田中六五」を合わせて。

  • 鹿児島・小野食品の鯖みりんが香ばしく焼き上げられている。

  • 焼き上がった鯖みりんには、鹿児島の焼酎「大和桜」を。食材の背景に合わせたお酒の組み合わせも楽しい。

  • 季節や仕入れで内容が変わる刺身の盛り合わせ。

  • 店主の野口貴史さん。

  • 一見テーブル席のようでありながら、こちらにも焼き場がある。半個室としても使える席として、現在整備中。

  • カウンター席とテーブル席を備えた店内。どちらの席からも調理の様子が見え、炉端焼きならではの香りや音、手仕事まで楽しめる。

香り、音、動きまでおいしい。

幅広に作られたカウンターに座ると、目の前で食材が焼かれ仕上げられていく料理場の様子につい見入ってしまう。椅子の背後や隣同士の距離感にもゆとりがあり、周囲を人を気にせず食事や会話ができる距離感も心地いい。


接客において野口さんが参考にしているのは、高級店での所作や振る舞いだという。すすむ堂を高級店にしたいわけではなく、心地よい接客を受けたときの満足感を、酒場という空間にも取り入れたいという考えからだ。


「料理の味の一つと言っても過言ではないくらい、ホスピタリティこそ一番こだわるべき部分だと思っています。わざわざ家を出て、お店を選んでご飯を食べに行くなら、おいしいだけでなく、やっぱり楽しかったなと感じてほしいので」。そう語る野口さんの言葉どおり、201号室の扉を開ける前の高揚感から、そのホスピタリティはすでに始まっていたのだと思う。店のあちこちにある細やかな気配りや仕掛けが、ここで過ごす時間を少し特別なものにしている。


「といっても、やっぱり酒場なので。しっかりお酒を飲んでもらいながら、どこかへ行く前にでも、ここをメインにしてもらっても、それぞれの楽しみ方で過ごしてもらえたら嬉しいです」と野口さん。


料理も接客も細部まで、こだわりにあふれている。けれど、堅苦しさや形式ばった緊張感はない。そんな酒場の心地よさを味わえる。

  • もともと住居だった物件を改装し、202号室と管理人室を合わせてつくられた店。中の様子が見えない扉を開けるドキドキ感も、すすむ堂の楽しみのひとつ。

  • 木彫りの熊のような存在感を放ちたいとオーダーメイドで作られたケースには、日本酒やワインがずらり。奥までそれぞれ違う銘柄が並ぶ。

GUIDE

yae

yae

「九州のすごさを改めて感じる品々。よりすぐりの素材を目の前ですばやく美しく、楽しく仕立ててくれる」


1997年東京生まれ。ニューヨーク州の山奥と海沿いで4年間の高校時代を過ごし、帰国後は循環を題目に取材や制作を開始。 より土に近い環境を求め2021年に九州に移住。

ITS ALL AROUND YOU Selected by
YOUR CITY IS GOOD?