FUKUOKA

CITY

ナカナカナカ/ひとつ屋根のした Nakanakanak&Hitotsu yane no shita

隣り合う2軒で、天神屋台の今を味わう。

天神屋台ならではの楽しみ方。

福岡の夜の風景として、多くの人が思い浮かべる屋台。なかでも中洲の屋台街は観光スポットとしても有名だ。一方で、天神にも近年、個性ある屋台が増えているのを知っているだろうか。中洲の観光地らしいにぎわいとは少し違い、天神の屋台には、どこか日常に近い親しみやすさを感じる。


「中洲だとどうしても人が多く、狭い席でファーストオーダーで終わり、という店も多いんですけど、天神はおかわりをしながら、比較的ゆっくりと客同士やスタッフとのコミュニケーションを楽しめるのが魅力だと思います」


そう話すのは、天神・三越前で隣り合う2軒の屋台を営む、高野将樹さんと高野妃華里さん。夫婦でもある2人は、それぞれ「ナカナカナカ」と「ひとつ屋根のした」の店主を務めている。

左が「ナカナカナカ」、右が「ひとつ屋根のした」。18:00にオープンするとすぐ満席に。店内には観光客も常連も混ざり合う。

それぞれのにぎわい、それぞれの味。

夕方になると、隣り合う2軒の屋台があらわれ、前を通りかかるだけでワイワイとしたにぎわいと活気が伝わってくる。そんなオープンな雰囲気やたたずまいは、屋台が初めての人や若者でも気軽に入りやすい。


将樹さんが店主を務める「ナカナカナカ」。福岡の屋台で楽しめるのはここ一軒だけという生のクラフトビールや、同じく屋台ではめずらしいスキレット料理など、「なかなかなか(なかなか無い)!」なメニューやスタイルからこの店名がつけられたのだそう。


明太卵焼き、もつ煮込み、焼きラーメンなど、福岡らしいメニューも揃う。観光で訪れた人にもうれしく、地元の人が普段使いするにも楽しいラインナップだ。


その隣にあるのが、妃華里さんが店主を務める「一つ屋根のした」。建築デザイナーが手がけたという屋台に、洗練されたロゴが描かれた短めの暖簾がかかる。暖簾が短い理由は「くぐるときにヘアスタイルが崩れないように」とのこと。こうしたやさしさが、入りやすさや居心地のよさにつながっているのだろう。


福岡の人にとって馴染み深いが、屋台では意外と珍しいうどんをはじめ、出汁の染みたおでん、鉄板料理、明太子丼など、小さな調理場でつくられているとは思えないほどメニューは豊富だ。

  • キッチンから気さくに話しかけてくれる将樹さん。「うちは元気がよくて、よくしゃべるスタッフが多いんです」。スタッフたちはてきぱきと調理しながら、遠方からのお客さんに声をかけたり、常連の近況を聞いている。

  • 「ナカナカナカ」の名物「鉄鍋肉汁爆弾餃子」。スキレットのまま、熱々・グツグツの状態で提供される。

  • 熱々のフライパンで仕上げる焼きラーメン。豚骨スープの旨みがぎゅっと凝縮された、ナカナカナカの人気メニュー。

  • 大ぶりのもつがごろごろ入った、満足感たっぷりの博多もつ煮込み。福岡ではナカナカナカでしか飲めないというクラフト生ビールとともに。

  • お客さん同士が屋台の屋根の下で仲良くなる様子を見て名付けられた「一つ屋根のした」。その名の通り、妃華里さんがこの小さな屋台に集う人たちを、ゆるやかにつないでいる。

  • 一つ屋根のしたのおでん。大根の上にカラフルなあられを散らした、屋台の定番に添えられるさりげないかわいらしさ。

  • 福岡の人にとって馴染み深いソウルフードであるうどん。屋台ではあまり見かけないが、一つ屋根のしたではメインメニューのひとつ。

  • 隣り合う2軒を営む、高野将樹さんと妃華里さん。2人の明るさに惹かれるように、今夜も自然と人が集う。

屋台らしさと新しさのあいだ。

妃華里さんの母は中洲で屋台を営んでおり、将樹さんもその店で働いていた。条例により母の屋台を受け継ぐことはできなくなったが、将樹さんは屋台という場の面白さを知り、自分の店を持ちたいと思うようになったという。そこで福岡市の公募を経て、2019年に「ナカナカナカ」をオープンさせる。2023年にはその隣で妃華里さんが「ひとつ屋根のした」をスタートした。


公募により新しい屋台の営業ができるようになったことからも、近年、現代的なメニューを取り入れた店やデザイン性のある店構えも増えている印象だ。けれど、高野さんたちは、ただ目新しければいいとは考えていない。


「いわゆる昔からの屋台っぽくないお店が増えている一方で、そればかりでは屋台の魅力はなくなってしまうと思うんです。屋台の魅力ってやっぱり渋さ。それを残しながら、現代らしい柔軟さも取り入れる。そのバランスが大事だと思います」。


身近にあった屋台の文化や歴史を大切にしながら、それぞれの感性で店をつくっていく。屋台らしさと、今の感覚に合う入りやすさ。そのバランス感覚が、人を引き寄せるにぎわいにつながっているのだろう。店先の活気は天神の通りへとこぼれ、この街らしい夜の風景のひとつになっている。

Photo:Shintaro Yamanaka(Qyum!)
Interview, Text:Mayu Shinohara(TISSUE Inc.)
Edit & Direction:Takatoshi Takebe(LIVERARY)

GUIDE

篠原繭

篠原繭

「店主2人の明るいオーラと、お店や街の活気を浴びられます!」


TISSUE Inc.の編集者。福岡と東京の2拠点で活動。

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