FUKUOKA

CITY

Kieth Flack

今日も鼓動を刻み続ける、
親富孝通りのペースメーカー。

奇妙なビルに足を踏み入れてみれば……。

天神から少し足を延ばした先、中央区舞鶴の親富孝通りにその場所はある。サクラダファミリアを思わせる奇妙な外観のマジックスクエアビル。その1階と2階を丸ごと占拠するクラブ・ライブハウス「Kieth Flack」は、1994年の創業から30年余りにわたり、福岡のカルチャーシーンに寄り添ってきた。


店名は、心臓の動きを制御するペースメーカー「キースフラック結節」という医学用語に由来する。開業当初、医学部出身のスタッフが多かったことからこの名が付けられた。バンドライブ、ダンスミュージック、ヒップホップ、ロック、実験音楽——ジャンル・年代問わず、ノーチャージのローカルイベントから、地方・海外からゲストを招く大型企画まで。その振れ幅の広さが「Kieth Flack」らしさだ。まるで心拍のようにこの場所でもほぼ毎晩イベントが組まれ、ビートが刻み続けられている。

ステンドグラス風の窓と、粘土で作ったかのような曲線の外壁。仮面や目玉、夜になれば音と共に動き出しそうな生きもののような造形のビル外観が特徴的。

ともに音を浴び、溶け合う人々の境界線。

2011年全国的な風営法の取り締まり強化によって摘発を受け、閉店の危機に追い込まれた。この場所を守るために、前代表から疋田真也さん(HIKKY THE MADNESS)が代表を引き継ぎ、現在のように朝まで営業できる形を取り戻した。「仮にお客さんが20人でも200人でも、パーティー感があって、誰でも入りやすく遊びやすいように意識して現場に立っている」と疋田さんは語る。その言葉通り、常連と初来店の客、ベテランDJと若いアルバイトスタッフ、ステージ上の演者とフロアの観客たちの境界線が曖昧に溶け合う空気が、この店の持ち味になっている。クラブ初心者でも気負わず足を踏み入れられる雰囲気こそ、「Kieth Flack」が長年かけて育んできたものなのだろう。


音のクオリティへのこだわりも妥協がない。アナログユニット「MONOSAFARI」としても活動するNobuyuki Nakamuraがサウンドエンジニアを務め、照明もイベントごとにイチから作り直す。スタッフそれぞれが異なる音楽的バックグラウンドを持ち、その多様さが日々の現場を豊かにしている。フロアに立てば、音と光が丁寧に設計された空間であることが身体を通して伝わってくるのだ。


かつて夜遊びの人々が集まる繁華街だった親富孝通りは、街の変化とともにその性格を変えてきた。ジャンルも顔ぶれも毎晩違うのに、フロアにはいつも同じ体温がある。観光客に至るまで、普段交わらない人たちが同じフロアに立ち、ともに音を浴びる。「個人店が集まることで街が面白くなっていると思う」という疋田さんの言葉は、福岡という街のあり方そのものを映している。Kieth Flackは今夜も、この街の鼓動を刻み続ける。

  • 誰もが安心して音楽を楽しめる場所づくりを意識してバーカウンターに立っている代表の疋田真也さん(HIKKY THE MADNESS)。

  • ドリンクメニューは豊富だが、今のおすすめは久留米にショップ兼スタジオを構える「茶番」の八女茶で焼酎を割った茶割り。焼酎は4種類から選べる。

  • 1Fのバーカウンター横には、これから開かれるイベントのポスターが並んでいて、ひと目見るだけでジャンルも規模もムードもさまざまなパーティーが日々行われていることがわかる。

  • 福岡で結成されたクルー「歓迎」によるパーティーの様子。

Photo:Shintaro Yamanaka(Qyum!)& Kieth Flack
Interview, Text:yae
Edit:TISSUE Inc.
Edit & Direction:Takatoshi Takebe(LIVERARY)

GUIDE

yae

yae

「踊りたい日も、深く音に潜りたい日もKiethに向かいます」


1997年東京生まれ。ニューヨーク州の山奥と海沿いで4年間の高校時代を過ごし、帰国後は循環を題目に取材や制作を開始。 より土に近い環境を求め2021年に九州に移住。

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