FUKUOKA

CITY

FEATURE

蓮沼執太とゆるやかに歩いて巡った、
福岡の朝と昼のあいだ。

音楽家・蓮沼執太と園田崇匡が、福岡・薬院の街を朝から満喫。珈琲→雑貨→最後は昼飲みで乾杯!

今特集記事のゲストは、音を軸に、映画、演劇、ダンスなどさまざまなフィールドで活動する音楽家の蓮沼執太さん。昨晩、福岡でのライブを終え、今日の夕方には東京へ戻るという彼とともに「YOUR CITY IS GOOD?」編集部が巡ったのは、街のムードを感じながら、午前中から楽しめる3つのスポット。

INDEX

福岡と聞くと、夜な夜な次から次へと複数のお店を巡ってお酒を楽しむ「はしご酒」など、夜の文化を楽しむ印象が強い。けれどせっかくなら午前中からこの街の時間を楽しんでもらいたい、と朝の散歩に誘ったというわけだ。


案内役は、「中華そば食堂そのだ」や「再来」など福岡市内で4店舗を営む園田崇匡さん。そこにライターのyaeが同行し、おしゃべりをしながら巡った。


待ち合わせは、天神から南に少し下った薬院エリア。飲食店や雑貨店、コーヒーショップが点在し、繁華街のにぎわいとはまた違う、日常や暮らしの気配が見える場所だ。まずは、福岡を代表するコーヒーショップのひとつ「COFFEE COUNTY Fukuoka」からスタート。

Photo:Shintaro Yamanaka(Qyum!)
Interview, Text:yae
Edit:TISSUE Inc.
Edit & Direction:Takatoshi Takebe(LIVERARY)

  • 写真左から園田崇匡、蓮沼執太。10:00のオープンに合わせて「COFFEE COUNTY Fukuoka」で集合。

  • 緑色の建物に、差し色のように映える紫色の看板が目印だ。

01 : COFFEE COUNTY Fukuoka

一杯のコーヒーから生産地に思いを巡らす。

「COFFEE COUNTY」は、2013年に福岡・久留米で1店舗目をオープンしたコーヒーショップ。薬院にあるここ、「COFFEE COUNTY Fukuoka」は今年で10年目を迎える。


オーナーの森崇顕さんはコーヒーの生産国のひとつであるニカラグアに3ヶ月間の研修を経験したのち、「COFFEE COUNTY」をオープン。現地に足を運び、生産者から直接豆を買い付け、久留米のロースタリーで焙煎を行う。産地や生産者、農園の標高。そうした一つひとつの要素が、豆の個性をかたちづくる。農園の人々と直接つながり、コーヒー豆の背景を知ることで、焙煎や抽出方法にも変化が生まれることがあるという。

店長の栗原大嗣さん(写真左)に豆の説明を聞きながら、コーヒーを選ぶ2人。

店長の栗原さんに豆の説明を聞きながら、蓮沼さんは軽やかで華やかな味わいが特徴のルワンダを、園田さんはゲイシャ種特有の華やかさと、フルーツシロップのような甘さが続くコロンビアを注文。おすすめしてもらったキャロットケーキも追加した。コーヒーを待ちながら、まずは前夜の話から。

中央の大きなテーブルと壁際の席で構成された店内。壁には作品や民芸品も飾られている。

  • 園田

    昨日までのツアー、お疲れさまでした!昨夜は打ち上げを?

  • 蓮沼

    ありがとうございます。東京、名古屋、大阪、福岡と回ってきたツアーのファイナルだったので、ライブのあとも福岡の街をお酒とともに練り歩きましたね。朝3時まで(笑)。

  • 園田

    じゃあ気持ち的には今もまだ、その延長戦っすね。

  • 蓮沼

    はい、まだ続いてる感覚です(笑)。

しばらくして、コーヒーが出来上がる。一杯ごとに、産地や味の特徴について書かれたペーパーが添えられていた。説明を読みながらコーヒーを一口ずつ飲んで、自然と朝の調子も少しずつ整っていく。

選んだ豆に合わせ、産地や味の特徴が書かれた紙を添えてくれる。

  • 蓮沼

    わ、美味しい。おすすめしてもらったルワンダ、朝にちょうどいい軽やかさですね。

  • 園田

    コロンビアも香りがすごくいいです。キャロットケーキとも合う。蓮沼さんは、いつもコーヒーは飲みますか?

  • 蓮沼

    朝ごはんの後に飲むことが多いです。家の近くにオルタナティブな感じのコーヒー屋さんがいくつかあるので、その時の気分で豆を買って、ハンドドリップで淹れています。こだわりがあるわけではないんですが。

  • 園田

    だいぶちゃんとしてますよ。僕は仕事前にサクッと飲むことが多いかな。だからこうやって説明を聞いたり読んだりしながら飲むと、やっぱり一杯の感じ方が全然変わります。

  • 蓮沼

    そうですね。ルワンダのコーヒーと聞くと、なんとなく生産地のことをイメージしながら飲みますよね。どんな場所で作られているのかなとか。

  • エチオピアの伝統的なコーヒーセレモニーで使われる道具

  • 店内に並ぶ、コーヒー豆の生産国を訪れた際に持ち帰ってきた民芸品。

店内には、ルワンダで使われている容器や、エチオピアの伝統的なコーヒーセレモニーで使われる道具など、コーヒー豆の生産国を訪れた際に持ち帰ってきた民芸品も並んでいる。コーヒーを飲みながら、豆の背景だけでなく、そこでの生活や使われている道具にも自然と目が向く。

ルワンダやニカラグア、ケニアなどで持ち帰ってきた民芸品について、COFFEE COUNTY Fukuokaの栗原さん(写真左)から話を聞く3人。

  • 蓮沼

    いろんな民芸品がありますね。なんか叩くといい音がしそう。

  • 栗原

    これはルワンダの民芸品で、牛乳などを入れておく容器なんです。他にも、ニカラグアやケニアを訪れた際に購入したものを、お店に持ち帰って飾っています。

  • yae

    今飲んでいるコーヒーが生まれた場所で使われている道具が、こうして目の前にあると、ぼんやりイメージしていた産地のことも少し身近に感じますねー。

店内には展示スペースも設けられている。個人店が点在する薬院エリアでは、店同士や近所の人との距離も近く、様々な人がクロスオーバーするこの土地でふとした会話や出会いが、展示や企画につながることもあるという。

遠い生産地へ思いを巡らせたり、それぞれが住む街や日々の過ごし方を話したり。朝のコーヒーで少し目を覚まして、3人は「COFFEE COUNTY Fukuoka」を後にした。

📍 店舗の紹介記事はこちら

主要駅や空港、港から市街地までの距離が近く、コンパクトシティとも呼ばれる福岡。博多から天神、大名、薬院などといったエリアも連なっていて移動しやすいのも、この街の魅力のひとつだ。

「COFFEE COUNTY Fukuoka」から「HIGHTIDE STORE Fukuoka」へ。歩いて次の目的地に向かう3人。

  • 蓮沼

    福岡の街の移動は、やっぱり徒歩か自転車なんですか?

  • 園田

    そうですね。普段の行動範囲は大名、薬院あたりでそれぞれの距離が近いので、基本的には自転車で、時間がある時は歩くようにしていますね。

  • yae

    園田さんって、たまにものすごい距離を散歩していますよね。

  • 園田

    そう、50kmくらい歩いたりします。峠を越えたりして。たまにしたくなるんですよね。蓮沼さんは散歩しますか?

  • 蓮沼

    50km!? 峠を越えたり!?(笑)僕はスタジオにこもって作業をしたあとに、一旦作った曲を書き出して、近くの川沿いを歩きながら聴いたりしますね。

  • yae

    散歩していると、聴いている音とか、歩いている街とかに、自分のバイブスがだんだん合っていく感じがありませんか?

  • 蓮沼

    ありますあります。チューニングを合わせるみたいな感じですよね。

  • yae

    福岡は街の規模感が大きすぎないので、道中もストレスなく楽しいです。

それぞれに散歩の目的や仕方は違うけれど、歩くことで街や音との距離を合わせていく感覚は、少し似ているのかも?そんな話をしているとすぐに「HIGHTIDE STORE Fukuoka」に到着した。

「HIGHTIDE STORE Fukuoka」に到着。店前には自転車を置けるスペースや、ベンチとテーブルのあるテラス席も。

02 : HIGHTIDE STORE Fukuoka

ユニークなデザインで日常をときめかせる文具店。

1994年創業の「HIGHTIDE」は、福岡を代表する文具・雑貨メーカー。 フラッグシップブランド「Penco®」や手帳(ダイアリー)のファンは多く、文房具の定番として愛され続けている。

満ち潮を意味する「HIGHTIDE」は、「満たされるモノづくりを届けたい。」 というテーマのもとに手帳の企画・販売を開始。 現在は東京、札幌、ロサンゼルス、ニューヨークにも直営店を展開するが、 薬院にあるこの福岡店が1号店。


店内には実用的な文房具から、ユーモア溢れるグッズ お土産にしたくなるようなかわいい雑貨までが幅広く並ぶ。印象的なのは、開放感のあるテラス席。 手に入れたノートとペンですぐに創作をはじめるのもよし。カフェメニューもあるので、コーヒーやHIGHTIDEオリジナルレモネードを片手にくつろぐのもよし。 文具店でありながら、ただ買い物をするだけではない時間が流れている。


各地からゲストを招いたイベントも行われており、そんな日はテラス席もよりにぎわい、さまざまな人が思い思いに過ごす。自由に使える余白のある場所に、福岡らしさを少し感じる。

  • 本格的な文房具、カラフルで気分の上がる雑貨から人にプレゼントしたくなるユニークな小物まで。

  • 店長のsuisuiさん(写真中央)に案内してもらいながら、店内の文具や雑貨を見て回る2人。

到着してすぐ、3人は店内に並ぶ色とりどりの文房具や雑貨を見て回った。店長のsuisuiさんに商品を案内してもらいながら雑談をしていると、自然と音楽の話題に。

  • 園田

    福岡はDJしている人が多い気がしていて。suisuiさんもDJをしているんですよ。

  • 蓮沼

    えー! DJではどんな音楽をかけるんですか?

  • suisui(HIGHTIDE)

    「lit」というパーティーのレジデントDJとして活動していたり、普段はダンスミュージックやアンビエントを流すことが多いです。園田さんやyaeちゃんもDJをしているので、去年の「HIGHTIDE」の創業30周年イベントでは、お二人にもDJしてもらいました。

  • 蓮沼

    文具に囲まれていても、気づいたら音楽の話になりますね。実は「HIGHTIDE」は前にも来たことがあって、ファンなんです。せっかくなので、何かお土産を買おうかな。

  • suisui

    文具以外にも、お土産に人気のものがいろいろありますよ。なつかしの文房具をモチーフにしたオリジナルライン「ニューレトロ」の、いろいろな言葉が書かれたワッペンなどもお土産に人気です。

ニューレトロシリーズのワッペンを選ぶ蓮沼さん。手に取っているのはしば犬のワッペンシールだが、選んだのはふたつ右隣の「せいじつ」。

  • 蓮沼

    ほー。僕はこれにします。「せいじつ」。言霊じゃないけど、言葉って文字にすることで、そこに導かれていく気がするので。

  • 園田

    「HIGHTIDE」って、これといった目的がない日でも、ふらっと立ち寄ったら気になる小物を見つけちゃったりして、楽しいんですよね。

  • 蓮沼さんは「Penco®」の8カラークレヨンとニューレトロの「せいじつ」のワッペンシールをゲット。

  • 園田さんは「PAPERSKY」のリフレクターキーホルダーとおそろいの8カラークレヨンを購入。

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時刻はお昼の12時ごろ。「HIGHTIDE STORE Fukuoka」を出て次に向かったのは、園田さんがオーナーを務める「中華そば 焼き鳥センター」。

カリグラファー・TOCHIによる手書き看板。「福岡で一番瓶ビールが冷えているお店」のコピーが印象的。

03 : 中華そば 焼き鳥センター

昼から呑みよし、定食もよし。

「中華そば 焼き鳥センター」では、こんな時間からも焼き鳥やおつまみ、お酒、そして定食が楽しめる。 天神エリアから薬院エリアまでの間にあり、 どこからでもつい向かってしまう立地だ。


店内に入ると正面のカウンター越しに焼き鳥が焼かれていて、思わずすぐにビールを注文したくなる。入り口にはのれんがかかっているので、平日の真昼間に1人でビールを飲んでいても、外からがっつり見られることもない。


大阪で約10年の経験を積み、 福岡に拠点を移したオーナーの園田さん。 めずらしいものやインパクトを重視するのではなく、 一人でもみんなとでも、いつでも気軽に集まれる場所を目指している。 焼き鳥や中華そば、定食といった多くのメニューのすべてを自ら考案。 今まで食べてきたものの記憶をたどり、味が思い出として残るものを想像し、再現するような感覚で作っているのだという。

  • まだお昼だけど、とりあえず本日はお疲れさま!の乾杯。

  • こちらは、園田さんのキープボトル。「自分の店で飲んだ方が、お得に気楽に飲めるんで(笑)」(園田)

  • 注文が入ってから、カウンター内で焼き上げる焼き鳥。昼からでも頼めるのがうれしい。

昼どきの店内には、ランチを食べに来る人も、昼飲みを楽しむ人もいる。それぞれの使い方ができる店内で、こちらも注文を終え、焼き鳥を待ちながらまずは乾杯。

  • 園田

    蓮沼さんは、お酒は何を飲むんですか?

  • 蓮沼

    お酒だけってことはあまりなくて、たいていはご飯と合わせて飲むんですけど、ビールが多いです。昨日は福岡での打ち上げらしく、ずっと焼酎を飲んでました。

  • 園田

    なんだかうれしいですね。九州の人は焼酎たくさん飲むので。

  • 蓮沼

    飲むのが意外って言われることもあるけど、結構飲みますよ。ここは、ボトルが入れられるのもいいですね。

  • yae

    どこで遊んでいても、仕事が終わったあとでも、一旦ここに来て、一息つくことが多いです。ひとりでも、友人と何人かでも、本当に立ち寄りやすいんで。

  • 蓮沼

    うん、こんな時間から焼き鳥が食べられて、この空気感でビールも飲めて。近所にあったらいいなあ。

  • yae

    そうですね。ごはんを食べたい時も、ちょっと飲みたい時も。日常の中にある店っていう感じがします。

  • 園田

    小さい街の中で店同士も近いし、人との距離も近い。 福岡、住みやすいし、いい街ですよー。

  • 秘伝のたれにつけた皮。香ばしく焼かれた表面と、じゅわっとした脂がビールに合う。

  • 名物・中華そばは、お昼ごはんにも、飲みの締めにも頼みたい一杯。

その街とのチューニングを、歩きながら少しずつ合わせていく。


コーヒーを飲み、文具を選び、昼から焼き鳥と中華そばで一杯。福岡と聞いて思い浮かべる夜の街とは少し違う、午前中からゆっくり楽しむ一日になった。

最後に「もう一杯」と乾杯。

蓮沼さんは空港へ向かう時間ぎりぎりまでビールをおかわりして、締めの中華そばも注文。ライブの翌日、東京へ戻るまでのわずかな時間も、福岡の街での時間をしっかり味わってくれた。

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GUEST

蓮沼執太

蓮沼執太

SHUTA HASUNUMA

音楽家・アーティスト。1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外での音楽公演をはじめ、映画、テレビ、演劇、ダンス、ファッション、広告など様々なメディアでの音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンス、プロジェクトを制作する。近年のアルバムに蓮沼執太チーム『TEAM』(2025)、灰野敬二 + 蓮沼執太『う       た』(2025)、『unpeople』(2023)。主な個展に「Compositions」(Pioneer Works 、ニューヨーク/ 2018)、「 ~ ing」(資生堂ギャラリー、東京 / 2018)などがある。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2026年8月6日に活動20周年記念コンサートを東京サントリーホールで開催。

GUIDE

園田崇匡

園田崇匡

TAKAMASA SONODA

「中華そば 焼き鳥センター」オーナー。2012年に神戸で中華そばそのだ開業、 2016年に大阪で「大衆食堂スタンドそのだ」、その後「台風飯店」なども始め飲食店から多岐に渡る店舗運営をしていたが、コロナ中に事業を半分ほど譲渡して現在は福岡在住。

yae

yae

1997年東京生まれ。ニューヨーク州の山奥と海沿いで4年間の高校時代を過ごし、帰国後は循環を題目に取材や制作を開始。 より土に近い環境を求め2021年に九州に移住。

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